日本には特定の地域で生産され、その土地の文化とともに発展を遂げた「地方野菜」が全国各地に存在します。前回は京都発祥の「京野菜」と石川県金沢市周辺の「加賀野菜」を紹介しましたが、今回フォーカスするのは、東京の「江戸野菜」です。

江戸野菜と聞いただけではピンとこないかもしれませんが、「練馬大根」や「谷中生姜」など、名前に地名を冠した野菜は意外と多いものです。今回は特徴的な江戸野菜と、それに適した調理法をご紹介します。

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参勤交代の歴史から生まれた「江戸野菜」とは?

江戸野菜とは、江戸期から始まる東京の野菜文化を継承した野菜のことです。江戸野菜の多くは、参勤交代で全国各地から大名が持ち込んだ郷土の野菜をルーツとしています。その昔「江戸」と呼ばれていたエリアは、現在の東京23区とその周辺地域。しかし、現在の23区内には耕作地がほとんどなく、伝統野菜の生産を維持することが難しいため、耕作地を東京都内全域に広げる形で「江戸東京野菜」という呼称が使用されています。

江戸東京野菜は農地の減少にともない、一時は消滅しかけていました。しかし、平成23年(2011年)にJA東京中央会で「江戸東京野菜」の呼称が定められてからは、東京のブランド野菜として学校給食やホテル・飲食店で提供される機会も増加。現在は東京江戸野菜の普及活動が進められ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで東京の「おもてなし」を担う食材として期待を集めています。

うどん料理に使いたい江戸東京野菜をご紹介!

江戸東京野菜の代表的な品種には練馬大根、亀戸大根、馬込三寸大根、谷中生姜、ごせき晩生小松菜、金町こかぶなどがありますが、その大半が「根もの」であるのは、関東ローム層の水はけのよい土壌が根菜栽培に適していたためと考えられています。ここでは、うどん料理とも相性がいい品種をご紹介しましょう。

■千住一本ねぎ

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(画像はイメージです)
白い部分が長くて締まりもよく、煮くずれしにくい千住一本ねぎは、鍋物に好んで使われる江戸東京野菜です。熱を加えると甘みが出るので、鍋焼きうどんの具に最適でしょう。

千住一本ねぎのルーツは、天正(1573~1593年)のころに大坂からの入植者が現在の江東区で栽培を始めた根深ねぎです。当時は青い部分を食する葉ネギが一般的でしたが、江戸の気候では葉の部分が霜枯れしてしまうため、「土寄せ」で土に埋まっている白い部分を長くする工夫が施されたという歴史があります。

■滝野川ごぼう

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(画像はイメージです)
「東京大長」の呼び名でも知られる滝野川ごぼうは、現在の北区滝野川地区が発祥のごぼうです。柔らかく、香りがいいためうどん料理のアクセントになってくれるでしょう。

滝野川ごぼうは元禄(1688〜1704)ごろに改良・採種され、地名を取って滝野川ごぼうと名づけられました。国内で栽培されるごぼうの9割以上は、この品種の系統を受け継いでいると言われています。

■根菜でおいしいけんちんうどんを作るコツ

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江戸東京野菜を堪能するなら、さまざまな品種を一度に楽しめる「けんちんうどん」がおすすめです。根菜には独特のアクがあるので、皮をむいたついでにアク抜きのひと手間を加えましょう。

ごぼうは皮をこそぎ取り、切ったものからすぐに水につけます。水はごぼうの色で茶色に変色するので、3回ほど取り替えてアクを抜きましょう。れんこんや山いもは皮をむいて一口サイズに切ったら酢水にさらします。酢水の濃度は、水1カップに対して酢小さじ2杯が目安です。

まとめ

江戸時代から昭和にかけて、東京の人々の食生活を支えてきた江戸野菜。伝統野菜には、一般野菜にはない香りやえぐみ、苦み、甘みや旨みといった多様な風味が備わっています。ぜひシンプルなうどん料理に添えて、その繊細な特徴を味わいたいものですね。

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