冷やし中華、そうめん、ざるうどんなどのめん類は、夏バテ気味で食欲が落ちていても不思議とするする食べられる真夏の救世主。セミの鳴き声を聞きながら食べる冷たいめん類は、格別のおいしさです。

すりおろしたわさびやしょうが、細かく刻んだみょうがや大葉などの薬味は、ざるうどんやそうめんなどのめん料理にさまざまな表情を生み出します。薬味は味に変化をつけるだけでなく、貴重な栄養を摂取するという意味でも、ぜひ料理に取り入れたいもの。今回は、数ある薬味の中でもとくに個性的な辛みを持つ「わさび」の効果をご紹介します。

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わさびは日本古来の香味野菜

ツンと鼻に抜ける刺激が特徴のわさびは、日本原産の香味野菜。刺身のつまやそばの薬味として用いられ始めたのは室町時代のことで、江戸時代にはにぎり寿司の普及とともに、庶民にもなじみ深い食材となりました。現代の研究では、わさびに含まれる「アリルからし油(アリルイソチオシアネート)」には魚の生臭さの原因物質であるトリメチルアミンや腸管出血大腸菌O-157などの細菌、カビの繁殖を抑える力があることが解明されていますが、そのはるか昔から、わさびは"天然の防腐剤"として料理に用いられてきた歴史があります。

高い抗菌効果のほかにも、わさびのアリルからし油には脳梗塞などの原因となる血栓の発生を抑制する効果が期待されています。また、わさびに含まれるグルコシノレートは、身体の解毒機能を強化し、発ガン性物質を体外に排出する働きがあるといわれる注目の成分です。わさびの刺激的な香りは味のアクセントとなり、夏バテなどで食欲が落ちているときにも食事を摂りやすくしてくれます。夏は食中毒などにも注意が必要なので、抗菌作用や防臭作用が期待できるわさびを積極的に料理に取り入れましょう。

意外と知らないわさびの特徴とおいしい食べ方

■わさびを食べると鼻がツンとする理由

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殺菌作用や防臭作用があるアリルからし油ですが、この成分こそが、わさび特有のツンとした辛みの正体です。アリルからし油は揮発性が高く、常温で蒸気になるという特徴があります。このため、わさびを口に含むと上記が味覚・臭覚細胞を刺激し、ツーンと鼻に抜ける辛みを感じるのです。

わさびの辛み成分はとても繊細であるため、常温で放置したり加熱したりすると独特の風味が損なわれてしまいます。わさびやその加工品を料理に使用するときは、加熱を終えた仕上げのタイミングで加えるのがベストです。刺身やざるうどんに薬味として添える際は、わさびを食べる直前にすりおろすといいでしょう。

■わさびはすり方や時間経過によって辛さが変わる?

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アリルからし油は、わさびの細胞組織を破壊することで初めて生成されます。わさびの風味を最大限に引き出すには、おろす前に皮をそぎ、粘り気が感じられる程度まで細かくすりおろすのがポイントです。すりおろすときに力を入れすぎるとキメが粗くなって辛みが落ちてしまうので、目の細かいおろしで優しくすりおろしましょう。

すりおろしてから30分以上時間が経ったわさびは、包丁の背で叩くことで辛みを増幅させられます。辛みが苦手な方はわさびを荒めにすりおろしたり、少し時間を置いて辛み成分を蒸発させたりして辛さを調整するといいでしょう。

■薬味はつゆに溶かさず食べるのが通!

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今ほど鰹節の質がよくなかった頃、ざるうどんやざるそばを食べるとき、つゆの生臭さを消すためにわさびを溶く習慣が生まれたといわれています。しかし、繊細な味わいのわさびやしょうがなどの薬味は、適量を少しずつ使ったほうが本来の風味を堪能できます。

ざるうどんを食べるとき、まずつゆにわさびを溶かすという方も、たまには薬味の使い方を変えてみてはいかがでしょうか? 少量のわさびを箸の先に取り、それをうどんに載せてからつゆにつけて食べれば、おちょこに入った出汁の風味を変えることなく、それぞれの薬味の個性を最大限に楽しめるはずです。

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